街路樹の活用
Bob Taylorが、カリフォルニアの著名な樹木管理の専門家との提携を通じて、寿命を迎えた都市の街路樹を美しいギターへと生まれ変わらせる、革新的な木材調達プロジェクトについて語ります。
アーバン・ウッド:街路樹に吹き込む新たな命
従来、ギターに使用されるトーンウッドは、北米、中米、南米、西アフリカ、インド、ヨーロッパ、オーストラリアなど、世界各地の天然林から調達されてきました。私たちは今後も、こうした地域から長年にわたって木材を調達し続けたいと考えていますが、同時に、Taylorの本拠地である南カリフォルニア周辺からの木材調達についても、新たな可能性を模索しています。
その一環として、寿命を迎えた都市の樹木を、高品質なトーンウッドとして採用する画期的な取り組みを進めています。使用する樹種の中には、すでにギター製作者によく知られているものもあれば、私たちが初めて楽器業界に導入するものもあります。いずれも、優れたトーンウッドとしての特性を備えています。
この取り組みは、いわばギター製作における「地産地消」のモデルです。身近な地域の木材を有効活用することで、世界各地の森林への負担を軽減する、新たな木材調達のあり方を示していきたいと考えています。
アーバン(都市)・ウッドとは?
道路や沿道、学校やショッピングセンターの周辺、公園などの公共スペースには、数多くの樹木が植えられ、管理されています。通常、自治体は樹木管理の専門業者に委託し、こうした樹木の選定、植樹、維持管理から、寿命を迎えた際の伐採や植え替えまでを行っています。では、伐採された木は、その後どうなるのでしょうか。
従来、こうした樹木は都市廃棄物として扱われ、その多くが埋立処分されるか、ウッドチップや薪などの比較的価値の低い製品に加工されてきました。しかし、廃棄処分にかかる費用が増加する中、自治体はコストを抑えるため、より良い活用方法を模索しています。
すでに一部の自治体では、伐採した樹木を製材し、より付加価値の高い木材製品へと生まれ変わらせる取り組みが始まっています。また、バイオ燃料として活用する方法を検討している自治体もあります。こうした技術革新がさらに進むことで、これまで十分に活用されてこなかった都市木に、新たな価値を生み出す方法が広がることが期待されています。
都市木を活用するための市場や流通の仕組みが整えば、資源を循環させる経済の構築や雇用の創出につながるだけでなく、植樹プログラムを支えることもできます。特に気候変動への対応が求められる今、こうした取り組みは、地域社会に必要な緑を取り戻すうえでも大きな可能性を秘めています。
理想的なパートナー:West Coast Arborists
さまざまな可能性を検討した結果、理想的なパートナーは、地元の樹木管理会社 West Coast Arborists, Inc. (WCA)であることがわかりました。
WCAは、カリフォルニア州とアリゾナ州の市や郡を含む約300の公共機関に対し、専門的な樹木の維持管理サービスを提供しており、600万本以上の樹木を管理しています。同社が扱う樹木の量と品質は、Taylorが街路樹をギター製造に継続的に活用するために必要な、安定した木材供給を可能にするものでした。
WCAは毎年約20,000本の新たな樹木を植えています。2000年頃までは、自治体からの依頼で伐採した樹木のほとんどを薪として販売するか、埋立処分していました。しかし、処分費用を削減するため、集積場で樹種ごとに木材を仕分けし、大きな丸太の切断面には、ひび割れを防ぐための保護処理を施すようになりました。
さらに、Wood-Mizer製の移動式製材機を導入し、「Street Tree Revival」と名付けた独自の都市木リサイクル事業を開始しました。ちょうどその頃、偶然にもTaylorとWCAの間で協力に向けた話し合いが始まったのです。
最新技術を活用した街路樹の管理
WCAは、高度な樹木管理データベースも開発しています。このデータベースには、同社が業務を行う各都市のすべての管理対象樹木について、樹種、サイズ、健康状態、過去の維持管理記録などが登録されています。
これらの情報によって、WCAは今後数年間にわたる樹木管理の見通しを立てることができ、自治体による樹木の維持管理計画にも役立てています。また、Taylorのような木材購入者にとっても、将来の木材供給量をある程度予測できるという利点があります。
アーバン・アッシュ、そして新たなトーンウッド
Bob TaylorとTaylorのマスタービルダーであるAndy Powersは、カリフォルニア州オンタリオにあるWCAの木材集積場を訪れ、保管されている樹木を調査しました。その中で、シャメル(エバーグリーン)・アッシュをはじめ、ギター製作に適した可能性を持つ複数の樹種を発見しました。
木材を製材・乾燥させた後、Andyが試作ギターを製作したところ、非常に優れた結果が得られました。そこで私たちは、この木材を使用したモデルを開発し、Taylorのラインナップに加えることを決定しました。
2020年初頭には、アーバン・ウッドを使用したTaylor初のモデル、Builder’s Edition 324ceを発表しました。バック&サイドにはシャメル・アッシュを採用し、この新たな取り組みに注目してもらうため、木材を「アーバン・アッシュ」と名付けました。
その後もアーバン・アッシュを使用したさまざまなギターを製作し、2022年には、新たなアーバン・ウッドであるレッド・アイロンバーク(学名:Eucalyptus sideroxylon)を採用した専用シリーズを発表。この木材を「アーバン・アイロンバーク」と名付け、ラインナップをさらに拡充しました。